私は配信の背景透過に NVIDIA の背景除去を使っています。グリーンバックは持っていません。
最初に正直に書いておきます。私はグリーンバックを使ったことがありません。 検討して落としたのではなく、最初から検討していませんでした。
なので、この記事は比較記事ではありません。片方しか使っていない人間が書く「こちらの方が優れています」は、読んでも参考にならないからです。
代わりに、これを書きます。
- ソフトウェアの背景除去で、実際に困っている3つのこと(記事の後半)
- それでもグリーンバックに移らない理由
- OBS で使う場合、手順が変わるという話(意外と知られていません)
グリーンバック側の話は、あくまで「調べて分かった一般的な内容」として先に置いておきます。
先に手順の話: OBS で使うなら NVIDIA Broadcast アプリは要りません
ここは実用的な話なので先に書きます。
NVIDIA の背景除去には、大きく2つの使い方があります。
| 方式 | 使うもの | 効く範囲 |
|---|---|---|
| アプリ方式 | NVIDIA Broadcast アプリ(仮想カメラとして出力) | OBS以外のアプリ(Discord・Zoom等)にも効く |
| OBSフィルタ方式 | OBS のカメラソースにフィルタを追加 | OBSの中だけ |
私は後者のOBSフィルタ方式で使っています。
OBS 27以降は、NVIDIA Broadcast アプリを起動しなくても、OBS 側のフィルタとして背景除去を追加できます。この場合に必要なのは Broadcast アプリではなく、NVIDIA Video Effects SDK です。
紹介記事の多くは Broadcast アプリを入れて仮想カメラを経由する手順で書かれているので、「アプリを常駐させないといけない」と思い込んでいる方は、一度OBSのフィルタ一覧を見てみてください。
配信でしか使わないなら、OBSフィルタ方式の方が構成はシンプルになります。逆に、Discordの通話でも背景を消したいならアプリ方式が要ります。自分がどちらを必要としているかで選ぶところで、優劣ではありません。
グリーンバック(クロマキー合成)について
ここからは、私が使っていない側の話です。調べた範囲の一般的な内容として読んでください。
グリーンバックとは、背後に緑色の布やスクリーンを設置し、OBS Studio などの配信ソフトで「緑色の部分だけを透明にする(クロマキー合成)」という古典的かつ確実な手法です。
一般に言われるメリット
- 輪郭の抜けが綺麗で安定する 物理的に背景を単色で覆うため、髪の毛の1本1本や手に持っている物の輪郭まで、ノイズなく綺麗に切り抜かれます。
- PCへの負荷がかからない AIの計算処理を挟まない単純な色抜き処理なので、ゲーム配信などPCスペックを限界近くまで使う場面でも動作が重くなりません。
一般に言われるデメリット
- 場所を取る。設置と片付けが面倒 安い布製のものは毎回のシワ伸ばしが必要になります。ロールアップ式の製品でも、設置には約2メートル幅の空間が必要です。
- 照明の知識が必要 グリーンバックは「均一に光が当たっていないと綺麗に抜けない」という性質があります。布に自分の影が落ちていたり、部屋が暗かったりすると、背景が乱れてかえって見栄えが悪くなります。
このデメリット2つが、私がグリーンバックを検討すらしなかった理由だと思います。思うのであって、そう判断した記憶はありません。 ソフトで済むと知った時点で、物理的な選択肢が視界から外れていました。
NVIDIA の背景除去(ソフトウェア方式)について
NVIDIA の背景除去は、NVIDIA製のグラフィックボード(RTXシリーズ)のAI処理を使って、カメラに映った人間を自動認識し、背景だけをデジタルで除去する機能です。追加費用はかかりません。
メリット
- 物理的な準備が不要 スクリーンも布も要りません。部屋の状態に関係なく、AIが「人間以外」と判断したものを消してくれます。
- 暗い部屋でもそれなりに使える グリーンバックのような均一な照明がなくても、AIが自動判断してくれるため、多少暗い環境でもそれなりの仕上がりになります(明るい方がより綺麗なのは間違いありません)。
前提条件
RTXシリーズのGPUを搭載した Windows PC が必要です。GTX シリーズや Mac では使えません。ここは代替手段がないので、持っていない場合はグリーンバック側を見ることになります。
実際に困っている3つのこと
ここからが本題です。使い続けている今も、この3つは解決していません。
1. 持っている物が消える
一番よく踏みます。AIが「人間ではない」と判断したものは、問答無用で消えます。
飲み物のコップを顔の横に持ってくる、買ったものをカメラに見せる、といった動きをすると、手に持っている部分だけが背景と一緒に消えます。 手は残って、持っている物だけが無くなるので、見た目としてはかなり不自然です。
物を見せる配信をする方は、ここが最初の壁になります。私の場合は「見せたいときは背景除去を切る」で運用していますが、切り替えを忘れて、消えたまま話し続けたことも何度もあります。
2. 輪郭がチラチラする、髪が欠ける
静止していれば安定していますが、動いたときに輪郭が揺れます。 髪の毛の細かい部分は特に苦手で、動きに合わせて欠けたり戻ったりします。
普通にゲームをしながら喋っている分には、そこまで目立ちません。ただ「綺麗に抜けている」とは言えない品質です。グリーンバックの方が輪郭が安定する、という一般的な説明は、たぶん正しいのだろうと思っています。
3. ゲームのフレームレートが落ちた
これは体感で分かるレベルで落ちました。
背景除去はGPUで処理されるので、ゲームと同じ資源を取り合います。GPUを限界まで使う設定でゲームをしていると、背景除去のぶんが確実に持っていかれます。
グリーンバックが「PCに負荷がかからない」と紹介されるのは、ここが理由です。この点だけは、実際に困ってみて意味が分かりました。
それでもグリーンバックに移らない理由
3つも困っていて、それでも移っていません。理由は単純です。
設置と片付けが要らないからです。
私が困っている3つは、いずれも配信中に少し我慢すれば済む種類の問題です。物が消えるならその瞬間だけ切ればいい。輪郭は少し揺れる。フレームレートは設定を1段下げれば足りる。
一方、グリーンバックの手間は毎回の配信の前後に発生します。 布を張って、シワを伸ばして、照明を当てて、終わったら片付ける。
配信を始める前のハードルを上げるものは、私の場合、確実に配信の回数を減らします。 画質のために準備が1つ増えるくらいなら、輪郭が揺れている方がまだ良い、というのが今の判断です。
これは「グリーンバックが劣っている」という話ではありません。続けやすさを画質より優先しているというだけで、逆の優先順位の人には逆の結論が出ます。
グリーンバックが向いている人
以下に当てはまるなら、グリーンバックを検討する価値があると思います。私が困っている3つは、いずれもグリーンバックなら起きない問題です。
- 手元の機材や小物を頻繁にカメラに見せる(消える問題が構造的に発生しません)
- GPUをゲームに全部使いたい(負荷の取り合いが起きません)
- 配信専用の部屋がある、または背後に2メートルの余白が作れる
- 照明機材をしっかり揃えられる
- そもそもRTXシリーズのGPUを持っていない
まとめ
- 私はグリーンバックを使ったことがないので、比較はできません。 検討して落としたのではなく、最初から検討していませんでした
- OBSで使うなら NVIDIA Broadcast アプリは不要。OBSのフィルタとして追加できます(必要なのは Video Effects SDK)
- ソフトウェア方式で困っているのは3つ。持っている物が消える / 輪郭が揺れる / フレームレートが落ちる
- それでも移らないのは、設置と片付けが配信の回数を減らすから。画質より続けやすさを取っています
背景透過を検討している方は、「どちらが綺麗か」より、準備の手間を毎回払えるかどうかから考えると決めやすいと思います。

