私は本業の給与に加えて、副業としていくつかの収入があります。2026年、初めて確定申告をしました。
結果として、追加で税金を払うはずの自分の口座に、約100万円の還付金が振り込まれていました。
税務署に自分から連絡して返還しました。この記事では、何が起きて、どう気づいて、どう間違っていたのかを全部書きます。そのうえで、同じことを防ぐために提出前に見るべき数字をまとめます。
税務署からの電話は、還付金の話ではなかった
4月のある平日、税務署から電話がかかってきました。
内容は住所変更の届出に関する確認で、問題があるような空気ではありませんでした。事務的な確認が終わって、電話を切ろうとしたときに、ふと気になって自分から聞きました。
「ちなみに還付金とかって出てたりしますか」
聞いた時点では、出ていないと思っていました。 副業の収入がそれなりにあったので、むしろ追加で納税する側だろうと。軽い確認のつもりでした。
返ってきたのは「出ていますね」でした。
意味が分かりませんでした。追加で納税するはずの自分に、なぜ還付金があるのか。電話口でネットバンキングを開くと、約100万円が還付金として振り込まれていました。
ここで大事なのは、この話は税務署から指摘されたものではないということです。電話の本題は住所変更でした。還付金の話は、私が自分から振らなければ、その場では出てこなかった話です。
黙っているか、正直に言うか
口座の数字を見た瞬間、こういう考えが一瞬よぎりました。
「これ、黙ってたらバレないんじゃないか」
正直に書いておきます。逃げ道が一瞬見えました。
ただ、すぐに消えました。理由は倫理観というより、割に合わないと思ったからです。
還付額がこれだけ大きく、所得と控除のバランスが不自然な申告は、いずれ確認される可能性があります。数か月後か、数年後かは分かりません。後から指摘されて修正や返還を求められたとき、延滞税のようなものが付く可能性もあります。
そして何より、税金の仕組みを理解していない自分が、後から指摘されてきちんと説明できる自信がありませんでした。
だったら、今言ったほうが楽だと思いました。
その場で「想定と違う額が振り込まれていました。返還したいです」と伝えました。
返ってきたのは、拍子抜けするほど淡々とした返事でした。
「では、こちらから書面をお送りしますね」
怒られることも、詰められることもありませんでした。
返還手続きは、想像よりずっと簡単だった
「返す」と決めたあと、もっと大変な手続きを想像していました。
実際は、税務署から届いた書面の指示どおりに対応するだけでした。特別な説明を求められることも、責められることも、疑われることもありません。ただの修正手続き、という印象でした。
この記事を読んでいる方が同じ状況になったとき、「申し出ると面倒なことになる」という心配は、少なくとも私のケースでは当たりませんでした。
一番しんどかったのは、手続きではなく、「黙っていればいいかもしれない」と考えていた時間の方でした。
何がどう間違っていたのか
電話を切った時点では、何が間違っていたのか全く理解していませんでした。分かっていたのは「追加で払うはずなのに返ってきている」という、数字のバランスがおかしいという感覚だけです。
税務署の説明を聞き、自分で書類を見直すなかで、構造が見えてきました。
確定申告の計算は、大まかにこうなっています。
収入 → 所得(収入 − 経費) → 課税所得(所得 − 所得控除) → 税額 → すでに払った税金との差額
ズレていたのは、このうち2か所でした。1つのミスではなく、2つが組み合わさって100万円になっています。 ここが、この件で一番伝えたい部分です。
ズレ その1: 経費が二重に効いていた
実際に認識していた経費は約60万円でした。配信機材、PC関連、通信費が中心です。金額としては妥当な範囲だったはずです。
ところが、会計ソフトの入力過程で、同じ経費が重複して反映されていました。
原因は特定できています。銀行口座の自動連携で取り込まれた分と、自分で手入力した分の、両方に同じ支出が入っていました。
これは会計ソフトを使う人なら誰でも踏みうる形です。口座連携は便利ですが、連携で入ってくるものと自分で入れるものの境界を決めていないと、同じ支出が2つの経路から入ります。 そして申告書に「経費120万円」と大きく書かれるわけではないので、目視では気づきません。
ズレ その2: 本業の源泉徴収と組み合わさった
本業の給与からは、所得税や社会保険料がすでに引かれています。確定申告では、この「すでに払った分」と計算上の税額との差額が、還付か追加納税として出てきます。
経費の二重計上で課税所得が実態より極端に小さくなり、そこに本業から引かれている税金や社会保険料が乗ったことで、「払いすぎている」という方向に大きく振れました。
副業だけをやっている人なら、ここまで大きくは振れなかったはずです。 本業の給与から天引きされている金額が土台にあるからこそ、経費のズレが増幅されて100万円になりました。
会社員の副業で確定申告をする人は、この構造だけは知っておいた方がいいと思います。 経費の入力ミスは、副業の収入規模ではなく、本業の天引き額の大きさに比例して効きます。
提出前に見るべき3つの数字
会計ソフトが悪いわけではありません。ツールとしては優秀です。ただ、入力した数字が正しいかどうかは、ソフトは判断してくれません。
同じ経費を別の経路で2回入力しても、エラーにはなりません。計算が完了して「申告書ができました」と表示されます。初めての申告だと、その完了画面を見て安心してしまいます。私がまさにそうでした。
最低限、提出前にこの3つを確認すべきでした。
- 経費の合計額が、自分の感覚と合っているか 60万円のつもりが120万円になっていないか。合計額だけは、ソフトの外で一度自分で見積もってから突き合わせる。 これが一番効きます
- 還付額が、収入と天引き額から見て妥当か 「追加で払う側だと思っていたのに還付になっている」は、それだけで異常のサインです。方向が想定と逆なら、金額の大小に関係なく止まる
- 同じ支出が、口座連携と手入力の両方で入っていないか これが私のケースの直接原因です。連携を使うなら、手入力する範囲をあらかじめ決めておく
正直に書いておくと、私はこの3つを自分で実行したことがまだありません。 あの件のあと、次の申告の機会がまだ来ていないからです。なので、これは「効いた対策」ではなく、「これを見ていれば防げた」という反省の形です。実行報告ができるのは次の申告のあとになります。
配信者はいつから確定申告が必要か
ここからは、当時調べた一般的な内容です。
会社員は普段、年末調整で税金の清算が完了しています。ただし、副業の所得(収入 − 経費)が年間20万円を超えた場合は確定申告が必要になります。
- Twitchのサブスクライブ収入の年間合計が20万円超
- YouTubeのスーパーチャット累計が20万円超
- 複数プラットフォームの合計が20万円超
こういったケースでは、翌年2月から3月の申告期間中に申告します。
「バレないだろう」は危険です。配信プラットフォームの収益は決済代行を通じて銀行口座に振り込まれるため、税務当局が名寄せしやすい形で情報が残ります。
配信者が経費にできるもの
配信活動に直接関係する支出は「必要経費」として計上できます。
| 経費の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 機材・設備費 | PC、マイク、Webカメラ、キャプボ、グリーンバック、照明 |
| 通信費 | 配信用のインターネット回線(按分が必要) |
| ソフトウェア費 | 有料プラグイン、グラフィックツール |
| 学習費 | 配信・開発に関する書籍やセミナー |
| 消耗品 | デスク、チェア(仕事専用であることが前提、按分可) |
「ゲームを楽しむためのソフト代」はグレーゾーンです。配信で実際に使う根拠がなければ厳しい。判断に迷う場合は税理士に相談してください。
還付が出るケース
申告は税金を取られるだけのものではありません。払いすぎた税金が戻ってくる(還付) ケースもあります。
- 医療費控除: 年間の医療費合計が10万円を超えると、超えた分の一部が所得から差し引かれます
- 機材の経費計上: 経費の分だけ所得が減るので、結果的に還付が発生することがあります
- ふるさと納税: 私も初めてふるさと納税をした年に申告しました。確定申告をする年は、ワンストップ特例が無効になる点に注意してください
つまり、還付そのものは異常ではありません。 異常なのは「自分の想定と逆方向に、想定外の額が出ている」ときです。
今の私の状態
参考までに、現在どうしているかも書いておきます。整った体制ではありません。
- インボイスは登録していません。 今のところ、それで困った場面はありません
- 屋号口座を作らず、個人の口座で受け取っています。 分けた方がいいのは分かっていますが、やっていません
口座を分けていないことは、さきほどの二重計上と無関係ではないと思っています。 生活費と事業の入出金が同じ口座にあると、口座連携で取り込まれるものと事業の支出の切り分けが、その分だけ難しくなります。
次の申告までに直すべきはここだと考えています。 できていないことを、できていないまま書いておきます。
e-Tax について
手続き方法は「紙の申告書を持参・郵送」か「e-Tax でオンライン完結」の2種類です。
マイナンバーカードとスマホがあれば、確定申告書作成コーナーから案内に沿って入力するだけで申告書が作れて、そのまま送信できます。税務署に行く必要はありません。
申告期間は毎年 2月16日から3月15日 前後です(年によって数日のズレがあります)。
まとめ
- 追加納税のはずが、約100万円が誤って還付されていました。気づいたきっかけは、住所変更の電話で自分から聞いたことです
- 黙る選択肢は一瞬考えました。 やめた理由は、後から指摘されたときに説明できる自信がなかったからです
- 申し出た結果は拍子抜けするほど淡々としていました。「言うと面倒になる」は当たりませんでした
- 原因は2つの組み合わせ。経費の二重計上(口座連携と手入力の重複)と、本業の源泉徴収。会社員の副業は、本業の天引き額の大きさでミスが増幅されます
- 提出前に見るべきは、経費の合計額 / 還付額の方向 / 入力経路の重複の3つ。ただし私はまだこれを実行できていません(次の申告がまだ)
税金の怖さより、分からないまま放置することのストレスの方が大きい、というのがこの件で一番残ったことです。
不安がある方は、最寄りの税務署の無料相談窓口か、税理士への相談をおすすめします。この記事は一個人の体験であって、税務上の助言ではありません。
同じ出来事を、手続きの解説抜きの体験記として note にも書いています。電話口で何を考えていたかは、そちらの方が細かく書いてあります。

