配信にコメント読み上げツールは必要?実際に使って困った4つのことと、自作に至るまで
「視聴者のコメントを拾いたいけど、ゲーム画面から目を離すとミスってしまう…」 「コメントが流れるのが早くて、目で追いきれない!」
ライブ配信を続けていると、誰もが一度はぶつかる「コメント対応の壁」。 視聴者とのリアルタイムなコミュニケーションは配信の生命線ですが、ゲームのプレイや作業と両立するのは至難の業ですよね。
そこで多くの配信者が導入しているのが、「棒読みちゃん」に代表されるコメント読み上げツールです。
私自身も配信で読み上げツールを使ってきました。そして正直に言うと、便利さと同じくらい、困ったことも経験しています。荒らしコメントをツールが元気よく読み上げて配信の空気が凍ったこともありますし、顔文字の羅列を延々と読み続けて止まらなくなったこともあります。
最終的には「自分が欲しい読み上げツールが存在しない」という結論に至り、自分で作ってしまいました。その話も最後に書きます。
この記事では、読み上げツールの基本的な役割とメリットに加えて、実際に使って困った4つのことを具体的に書きます。導入すべきか迷っている方の判断材料になれば幸いです。
コメント読み上げツールとは?
コメント読み上げツールとは、その名の通りYouTubeやTwitchのチャット欄に投稿されたテキストコメントを、自動的に音声に変換して読み上げてくれるソフトのことです。
日本では「棒読みちゃん」が最も有名ですが、他にも「VOICEROID(ゆかりねっと)」やクラウド型の読み上げブラウザ拡張機能など、様々な種類が存在します。
最大の役割は、「配信者が画面に集中したまま、耳でコメントを把握できる」という点に尽きます。
読み上げツールを導入する3つのメリット
1. ゲームや作業に100%集中できる
これが最も大きなメリットです。 FPSや格闘ゲームのような激しいゲーム、またはイラスト制作などの集中力を要する作業配信において、「視線をモニターからチャット欄へ移す」という動作は大きな負担になります。
読み上げツールがあれば、コメントが「声」として耳に直接届くため、視線を動かさずに視聴者の反応を知ることができます。ゲームの決定的なプレイを見逃さずに済むのは、配信者にとって大きな安心感に繋がります。
2. 「ながら見」の視聴者にも優しい
実はあなたの配信を見ている視聴者全員が、画面に釘付けになっているわけではありません。 「家事をしながら」「別のゲームを遊びながら」など、ラジオ感覚で配信を聴いている「ながら見視聴者」は非常に多いです。
読み上げツールがない状態で配信者が「あ、〇〇さんいらっしゃい!それは面白いね!」とコメントに反応しても、画面を見ていない視聴者には「誰のどんなコメントに対して笑っているのか」が全く伝わりません。
コメント内容が音声で配信に乗ることで、ながら見視聴者も話の文脈を理解しやすくなり、配信の疎外感をなくすことができます。
3. 無言の時間が劇的に減る
コメントが来るまで無言になってしまう、いわゆる「放送事故」状態。初心者が最も恐れる状況ですね。 読み上げツールがあると、コメントが読み上げられた瞬間に「あ、喋らなきゃ」という明確なキッカケ(トリガー)が生まれます。ツールが相棒のように喋ってくれるため、心理的なプレッシャーが軽減され、一人で喋り続ける苦痛から解放されます。
注意!実際に使って困った4つのこと
ここまで聞くと「絶対に入れた方がいい!」と思うかもしれませんが、導入にはいくつかの落とし穴もあります。以下は私が配信で実際に経験したものです。
1. スパムや荒らしコメントまで読み上げてしまう(最重要)
読み上げツールは、チャット欄のテキストを無差別に読み上げます。 荒らしが放送禁止用語や不快な言葉を連投した場合、ツールがそれを機械の明るい声で読み上げ、配信の空気が一瞬で凍りつきます。
これは私も経験しました。人間なら「これは読まない」と判断できるコメントを、ツールは何のためらいもなく読み上げます。自分が黙っていても配信には音声が乗ってしまうので、止めようがないのが厄介なところです。
対策: 導入する際は、必ず「NGワード機能」を併用してください。また、読ませる文字数の上限を設定する(例:50文字以上の長文スパムはスキップする)など、ツール側のフィルター設定は必須の作業です。ここを設定せずに本番配信で使うのは、かなり危険だと思っています。
2. 特殊文字や顔文字の「暴走」
「^^」などの顔文字や、「www」といった笑いの表現。 人間が見ればすぐに意味がわかりますが、ツールによっては「ハット記号 ハット記号」や「ダブリュー ダブリュー ダブリュー」と、機械的に長々と読み上げてしまうことがあります。
これも実際にありました。顔文字や記号がたくさん入ったコメントが来ると、読み上げが延々と続いて止まらなくなります。本人に悪気はまったくないぶん、対処に困る現象です。
対策: 「w」が来た場合は「笑い」と読むように辞書登録(単語の教育機能)を活用し、不要な記号は読み飛ばす設定(置換設定)を行いましょう。
3. コメントが多いと読み上げが「渋滞」する
意外と語られませんが、実際に配信していて一番ストレスだったのがこれです。
コメントが立て続けに来ると、読み上げが順番待ちになってどんどん遅れていきます。すでに話題が次に進んでいるのに、2つ前の話題のコメントが今ごろ読み上げられる。こうなると会話がかみ合わなくなり、視聴者にとっても配信者にとっても気持ちの悪い状態になります。
コメントが盛り上がっているときほど発生するので、一番盛り上がってほしい場面で一番崩れるのがつらいところです。
対策: 読み上げの待ち行列に上限を設けて、古いコメントは捨ててしまうのが有効です。「全部読む」ことより「今のコメントを今読む」ことを優先する考え方ですね。また、音声合成エンジンをローカルで動かしている場合は、GPUを使う設定になっているかどうかで速度が何倍も変わることがあります。ここは後述する自作ツールの開発中に、身をもって思い知りました。
4. コミュニケーションが「作業的」になるリスク
コメントが音声で流れてくることに慣れすぎると、配信者がチャット欄を自分自身の目で見る機会が極端に減ってしまいます。 視聴者からすると「自分ではなく、ツールと会話している」ような冷たさを感じさせてしまうリスクがあります。
耳でコメントを拾いつつも、重要な質問や長文の考察などが来た時には、しっかり画面のチャット欄を見て感情を込めて答えるといった、人間味のある対応を忘れないようにしましょう。
私が使っていたツールと、自分で作るまでの話
私が配信で使っていたのは、sayonari さんが公開されている 「チャット翻訳ちゃん(twitchTransFreeNext)」 でした。海外リスナーのコメントを翻訳して読み上げてくれる定番ツールで、配信のチャット翻訳という文化そのものを作ってきた存在だと思っています。とてもよくできたツールで、長くお世話になりました。
ただ、使っていくうちにひとつだけ引っかかる点が出てきました。exeファイルとして配布されているため、Windowsでしか動かないという点です。Macで配信している知人に勧めようとして、勧められないことに気づきました。
それなら「同じことがブラウザだけでできるもの」を作れないだろうか、と考えたのが自作のきっかけです。ブラウザで動けばOSを問いませんし、インストールも要りません。
そして開発を進める中で、当初はまったく想定していなかったことに気づきます。VOICEVOXを使った読み上げで「複数の声を使い分ける」ものが、探しても見当たらなかったのです。
リスナーごとに声を変える。日本語と英語で読み手を変える。そういう「声の配役」ができれば、コメント欄がぐっと聞き分けやすくなるはずでした。実際に作って試してみると、これが想像以上に配信の体験を変えました。誰のコメントなのかが声だけで分かるようになるからです。
結果として、当初の目的だった翻訳機能はサブに回り、「複数の声で読み分ける」ことがメイン機能になりました。作り始めた時と完成形が違うものになったわけですが、これは作ってみないと分からなかったことだと思います。
このツールは Chapi Voice Ensemble として無料で公開しています。ブラウザで動くのでWindowsでもMacでも使えますし、OBSのドックとしてそのまま配信画面に組み込めます。この記事で挙げた「荒らしの読み上げ」「顔文字の暴走」「読み上げの渋滞」は、いずれも自分が困ったことなので、対策の機能を入れてあります。
先行ツールがなければ、そもそもこの発想には至りませんでした。sayonari さんの取り組みに、あらためて感謝しています。
結論|どんな配信者におすすめ?
最終的に、コメント読み上げツールを導入すべきかどうかは、以下を基準に判断してみてください。
▼ 導入すべき人
- APEXやValorantなど、画面から1秒も目を離せない激しいゲームをする人
- お絵描き機材やプラモデル制作など、手元に集中したい作業配信者
- どうしてもコメントに気づかず、スルーしてしまいがちな人
▼ 導入しなくてもいい(慎重になるべき)人
- ASMRや弾き語りなど、配信の「音の雰囲気(世界観)」を最重視する人
- コメント欄の治安が悪く、スパム対応が頻繁に必要な人
- 視聴者数が非常に多く(数百人〜)、すべてのコメントを読み上げるとツールがパンクしてしまう人
まとめ
コメント読み上げツールは、適切に設定すれば配信の負担を劇的に下げ、「配信者と視聴者を繋ぐ最高の相棒」になってくれます。
ただし、設定せずに本番でいきなり使うのはおすすめしません。この記事で挙げた4つは、どれも私が実際にやらかしたことです。NGワード、辞書登録、読み上げの上限。この3つだけでも先に設定しておくと、事故の大半は防げます。
まずは無料のツールを試して、限定公開のテスト配信で「自分のゲーム音とのバランス」を確かめてみてください。そのうえで「もう少しこうしたい」が出てきたら、そこからが本番だと思います。私の場合、その「もう少し」が積み重なった結果、自分でツールを作ることになりました。
- Chapi Voice Ensemble … この記事で書いた困りごとへの対策を入れた、ブラウザで動く読み上げツール。無料・インストール不要
- 配信ツール一覧 … 他にも配信で使える無料ツールを公開しています
自分に合った設定を見つけて、より快適で楽しい配信環境を作っていきましょう。
